技術士による技術者のブログ

技術士の支援と国産エンジニアの再興

過疎化とコンパクトシティ

 今日のニュースでJR北海道が地方路線を維持できず、廃止方針を検討しているという記事がありました。北海道では新幹線が開通する一方で、地方部のインフラを維持できないという、まさに明暗が分かれた状況となっています。

 JR路線が廃止となる都市の北海道民も、税金の中から函館札幌間の新幹線にかかる費用を負担しているのに、幹線整備の恩恵がないどころか、逆に赤字が進むJRの政策に振り回された感があります。(新幹線延伸を決めたのはJRではないけど)

 日本の今後を見ていく中で、北海道の過疎化は一つのモデルケースと言っては失礼ですが、国交省はじめ国がどのような手を打っていくのか見守っていきたいと思っています。かつて、史上初の都市銀行破たん(拓銀)というのも北海道で見ていますし、国の政策に見放されると、劇的に状況は悪くなるのが北海道であり、また、全国の地方都市に言えることなのかもしれません。

 さて、本来国の推奨するコンパクトシティは、分散する住居やインフラを都市部に集約し、効率的な維持運営を行っていこうというものである筈ですが、その一方で過疎化を進めてしまうというトレードオフが発生します。

 しかし、過疎化と考えてしまえば何も進まないので、積極的にとらえて変化を恐れないことで、良い面を築いていく必要があるでしょう。例えば、人が住まなくなった地域の活用として、風力発電太陽光発電を進めたり、いわゆる調整区域やバッファー地区として都市施設を整備していくことができます。居住の生活環境保全とこれらの施設の立地・運営を両立することは難しく、明確に住み分けすることでメリットが生まれることもあります。

 各家庭で、冷蔵後にいつも卵と牛乳がストックされていて、それらが何十年も低価格で供給されてきたのも、牧場や養鶏場が合理的かつ衛生的に運営されているからですが、農家の苦労は大変ですし、家の近くに養鶏場があったら悪臭の苦情が絶えないでしょう。つまり、既にこれまでの過程において、農家は地方の山村に家畜を飼いながらも、都市部への供給は道路や鉄道のインフラ整備で補われたわけです。

 ですから、このようなスタイルを壊してしまうほどの政策はやりすぎだと思いますし、JRの路線を廃止するのも致し方ないのかもしれませんが、その先に住んでいる一次生産者を別の形でフォローしなければならいと私は思うわけです。

 地方都市は魅力的ですし、将来は田舎に住みたい私でした。 

建設環境分野の温暖化問題と熱中症

先日の技術士建設部門建設環境で地球温暖化の問題について。

 Ⅲ-1 (前半部略します) このため,近年の気候変動枠組条約の締約国会議(COP)においては,「緩和策」とともに気候変動による悪影響へ備える「適応策」を実施することの重要性が指摘されるようになっている。このような状況を踏まえ,以下の問いに答えよ。

(1)気候変動により想定される環境への悪影響とそれに対する適応策について,複数述べよ。(なお,自然災害に関する悪影響及び適応策は除く。)

(2)その適応策のうち,あなたが重要と考えるもの1つについて,実施するに当たっての技術的課題を述べよ。

(3)上記の課題を解決するための技術的提案及びその提案に関するリスクや留意点を述べよ。

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 本日現在、労働者の作業環境における喫緊の悪影響の一つとしては、現場における熱中症の増加があります。

 暑い日が続くこの頃は、気象条件以外の個々の体調と行動をどのように管理するかという点が喫緊の課題です。

 対応策は管理側のシステム化であり、当事者任せの管理は実施してはいけない。

 特に下請けや外部委託先は、コスト競争の中で少ない人員での根性論がまだまだ優先していますので、定期的な休憩と水分補給など、ある程度システム化することが必須でしょう。個別の単独行動は避け、体調管理には、定期的なミーティングと体調に関する報告の職場環境が重要です。

 具合が悪くとも我慢し続け、根性で乗り切るという昔の考えは捨てるべき時代になっていますし、荒療治はけがの元です。

 朝会やKY報告で、本当に「体調不良に〇がつけられる」職場になっていますでしょうか?

 この提案におけるリスクと留意点は、安全管理にコストがかかるということ。しかし、安全管理はコストがかかるものだと思いませんか?

 特に個別の体調と行動管理は、今のところローテクで人員が管理するしかないところでしょうが、今後Iotが進み、従業員にウェアブル端末が供えられる時代が来ると、GPSによる位置情報は勿論、それぞれの温湿度や体温、作業時間なども一括して事務所管理できるようになるのでは、、と思うわけです。

 

総監試験の新技術とは

総合技術監理部門の今年のトピックは「新技術」というお題でした。

 具体的には、『最近の科学技術の進展が引き起こした事業の内容や形態の変化とその影響、及び将来の科学技術の進展に伴ってその事業の内容や形態が大きく変化する可能性とその変化が及ぼす影響や課題について』、という内容です。

 

 当ブログで1ケ月前に「AI」がトピックとして出題されるとの予測をしましたが、「AI」という特定の技術名称は出なかったものの、各分野に将来やってくる「新技術への対応」がメインのテーマでした。また、1週間前にも、「超スマート社会の到来」について、IoTなどの技術が展開されるときに、新たに生ずる可能性について考えたい、という内容も記載しました。

 ただし、出題パターンについては過去の踏襲ではない変形パターンでした。まず、既に導入された技術に関する反省点を述べさせ、また、その上で遠い将来に更に新しい技術が導入されたときの課題について記載させるという、同じ内容を書き分ける問題形式は結構対応が難しいですね。

 また、過去に導入された新しい技術としては、例えば高速道路におけるETCとか、街角のあちらこちらに設置された監視カメラとか、ある意味、我々の社会生活や事業内容、事業形態に影響を与えたと思うものもあります。

 そして、これらの内容を論述する際に、総合技術監理の視点で書くという縛りがありますから、経済面、人的資源の面、安全、情報、社会環境面に関する課題を論じることになります。

 当然ながら、新技術はそれぞれ導入する目的があります。例えば自動運転方式であれば安全対策技術ということですが、エアバッグやABS装置の発想とも違った考え方やアプローチが生まれます。ただし、自動運転には自動運転なりの新たな課題が発生し、別のリスク検討が必要になりましょう。あるいは、経済面で自家用車の価格が上昇するという問題もあるかもしれません。

 遠い将来には、自動車社会全体に無人化技術が広まることが想定され、具体的には道路渋滞の解消や大気汚染・騒音問題が解決するメリットがありますが、別の問題も必ず起こることでしょう。それについては、ここでは詳述できませんが、各分野で何かしらの問題があるのではと思います。

 試験では、これらについて、各得意分野でどれだけ具体的な論述展開ができたかどうか、またできていなくても、課題点の解決方法が総監の視点でできたかどうか…。

 皆さま、どうか記述内容の再現を早めに行うことをお勧めします。

技術士試験会場に

 次の日曜と月曜が、技術士二次試験の日です。年に1回しかありませんので、申し込んだ人は、他の用事に拘らず試験会場に行くことを強くおねがいします。

 最近はほぼ冷房も完備された会場で、むしろ冷えすぎに注意するぐらいの快適さですし、8月の夏休みにお子さんとのバケーションをつぶすこともなくなったわけです。

 勉強が不十分なのは、大方の受験者がそうです。まったく準備していないという人も中にはいるかもしれませんが、準備が足りないと思ったら直前のヤマを張るなり、回答用紙をとりあえず埋め尽くすことを目標として、会場に向かいましょう。

 不思議なもので、私も総合技術管理の合格した年は、忙しくてあまり勉強ができませんでした。何年も同じ勉強をしてきたわりに不合格が続いたので、良くも悪くも完全に開き直っていました。できる問題で6割解けばいいのだ、と。

 もっと言うと、試験会場が変更になったことに気付かず、数日前に受験票をまじまじと見て、「少し遠い会場になったんだ!」と分かりました。下手をしたら遅刻していたかもしれませんので、これは恥ずかしいことです。

 とにかく、何でも質問に応じた内容を答案用紙に書くことが大事だと思います。そこで気付く経験もありますし、お金を払っているのですから、みすみす技術士会に献上することもないでしょう。しっかりと採点してもらおうではありませんか。

 ただし、先にも書きましたが、決して満点など狙わず、合格したらどうするかの抱負をたくさん抱きながら、前向きな回答を心がけるのです。できるだけ、具体的な内容で解決方法を自分で設定して論理を構築する。字は読みやすく、また、多少誤字があっても内容が誠実で、論理が通っていることが重要です。

 自分でよく書けたと思っても、得てして不合格なこともありますし、意外にも合格となることもあります。長時間の試験が終わったら、ほっとしてすべてを忘れたいところですが、来年以後も受験の煩わしさと対決するくらいなら、回答を再現したいところです。これは結構重要です。

 どうか、暑さに負けず、淡々と合格を目指して試験会場へ足を運んでいただきたいと思います。

廃棄物処理の精神

 廃棄物処理については、技術士受験以外の場面でも、勉強する機会が多いと思います。建設現場、工場、下水道、車のマフラーから出る排ガスであっても、考えようによっては気体状の廃棄物です。そして、核燃料廃棄物の問題は・・・・。

 今日現在、我が国の1つの重要なテーマは、「災害廃棄物の処理」です。

 東日本大震災に続いて豪雨や地震が毎年のように起こり、大量の廃棄物を同時に発生させることは勿論、自治体で普段構築した廃棄物処理システムが機能しなくなってしまうことで、がれきや土砂まみれのごみが放置されてしまう恐ろしい状況があります。

 

 そもそも、日本人は世界でも優れた衛生観念を持った民族です。

 欧米に比較して多湿でものが腐りやすい日本では、保存食と同様に廃棄物を適切に回収して処理する文化が生まれ、未だに諸外国と比較しても、全国的に清潔な国土となっていると思います。

 ところが日本列島は天災も多く、水害や土砂災害が高い頻度で起こります。

 現在の災害廃棄物がやっかいな理由は、量が膨大なこと以外に、「分別ができないこと」であると思います。ごみとして発生する予定がないものですから、分別などされる筈はなく、できればすべて管理型処分場に埋めてしまいたいほどです。

 しかし、計画に災害廃棄物に対応することなど可能でしょうか?

 環境省ホームページに、災害廃棄物の対策指針を示すサイトがあります。この中で、地方自治体は、平常時に災害廃棄物処理計画を作成し、まるで緊急避難と同様に、廃棄物に対する予防策を立てておく方針が書かれています。

 これもある意味「戦略的」に、リスク対策しなければならない分野なのでした。

 

 

第4次社会資本整備重点計画の戦略的維持管理とは

 国交省の重点施策を確認します。

 第4次社会資本整備の重点計画の中で、老朽化するインフラを長寿命化していくために、「社会資本の戦略的維持管理・更新を行う」と謳われています。

 この「戦略的な」という表現は、近年よく使われ、英語で言う”strategic”のことですが、今一、ピンとこない言葉ですね。

 ある意味将来を見通した計画的な…、という雰囲気でありましょうが、むしろ簡単に予想がつくインフラ構造物のメンテナンスではなく、自然災害など一律に予想できない、より対応が複雑な事象を対象とすべきではないか、と個人的には思うわけです。

 そこで、「今後の社会資本の維持管理・更新の在り方について 答申」(H25/12)を見ると、「戦略的メンテナス思想」という説明があり、『個々の施設の実情に応じた対応を図ることが必要』と示されています。個々の実情に応じることが戦略的な思想というわけです。

 一見、素晴らしいことが書いてあるようですが、悪くとれば、現場任せで基準を一律に設けないという話ですから、対応方法の判断にはかなりの熟度・経験が必要と思われます。

 答申の中には「それを実施するための体制は十分か改めて確認を行う必要がある」とか、「施設の変状の進度は比較的緩やかで、兆候を捉えることが難しいため、その 把握のためには高度な技術力が必要・・(中略)・・このため、技術力を有する人材の育 成・確保が重要だが、小規模な地方公共団体等では自ら人材を確保・育成していくこと は困難との指摘もある」という不安な内容も書いてあります。

 つまりは、戦略的にインフラを維持管理するためには、戦略的に人材を育成しなければならないという、根本的な問題に帰ってくるようです。

 民間企業でも同じようなことがあると思いますが、どんなに掛け声は素晴らしくとも、足元を見ると組織の基本がなっていないというケースは少なくないのでは?。

 我々技術者は、早い段階でこれに気づき、人材の育成に取り組む事、これが結果的に戦略的な対応として一番有効なのかと思う次第です。   

 

 

1週間前の確認事項ー国の重点施策ー

 技術士二次試験まで1週間となりました。

 今日は、各専門部門に関わる国の重点的な施策を記述します。

 まずは、政府の基本方針を知るために、技術士に関連する代表的3省のURLを紹介します。文科省は、科学技術・学術に関する基本的政策という頁です。

国土交通省 http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/point/sosei_point_tk_000020.html

環境省 http://www.env.go.jp/guide/budget/

文科省 http://www.mext.go.jp/a_menu/02_a.htm

 

 さて、国交省環境省は、施策の類似があり、「東日本大震災からの復興」と「2020東京五輪に向けた対応」がいずれも記載されています。文科省においては、「オリンピックレガシー」の説明があります。

 2020東京五輪に向けた対応は、昨年、総合技術管理部門の最大トピックとして出題されました。 一方、震災復興は重要なテーマですが、出題の優先度は少し下がると考えます。

 私が今回注目したのは、文科省の第5期科学技術基本計画と科学技術白書に記載がある『超スマート社会の到来』です。「超スマート社会」の内容は割愛しますが、とにかく文科省ではIoTやAIなどを駆使して、高度なサービス提供や危険労働の安全性向上するなど、未来社会の構築を世界に先駆けて実施する方針(society 5.0)を挙げています。

 このテーマは、あらゆる空間で人とモノを結ぶ情報をどのように操作し、また管理するかという、非常に重たい問題を含んでいると直感的にわかります。

 一例を挙げると、IoTについて言えば、建設現場で事故があったとしても、現場に端末があれば適切な治療が始められる利点がありますが、一方で事故が起きた情報が、とたんに漏えいする可能性があります。人命を救えた場合は称賛されるかもしれませんが、逆の場合、企業へのバッシングが始まり、謝罪や記者会見を待たずに事業存続が危ぶまれることも考えられます。

 以前、本ブログでAIに関する出題を予想しましたが、AIに関するリスクについてもどのようにコントロールすべきか、いろんなシミュレーションが必要でしょう。

 つまり、各技術分野に「超スマート社会」は到来するわけで、技術士はもとより、すべての管理者がこの問題に直面する可能性があると思います。

 国の施策という、重大かつ実現の可能性が非常に高いテーマですので、初期情報として参考にしていただければ幸いです。