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技術士による技術者のブログ

技術士の支援と国産エンジニアの再興

建設業界の問題とお勧めの新書

 若き技術者に、ひとつお勧めの本を紹介します。

 『青函トンネルから英仏海峡トンネルへ-地質・気質・文化の壁を越えて』持田豊著(中公新書)という新書本(1994年発行)です。

 今年3月に北海道新幹線が開業しましたが、この本は1988年に開通した青函トンネルの工事について、プロジェクトリーダである技術者が引退後にまとめたものです。

 ちなみに、地質技術者である持田氏の文章は、地質の専門知識がない私でも、十分に理解でき、単なるドキュメンタリーに留まらずなおかつ技術参考書として読む事ができます。

 この中で、昭和30年代から筆者が若手技術者として津軽海峡を訪れ、現場を開拓して、プロジェクトリーダとなって事業を成功させ、のちにドーバー海峡の英仏トンネルに協力する姿が描かれています。そして、それぞれの立場で管理技術者として何を考え、どう動いたかが楽しみながら勉強できます。

 また、終盤で英仏(一部アメリカ)技術者の特徴を分析し、いずれも「日本の技術者の方が優れている点が多い」と考察しています。そもそも、地質的には青函トンネルの方が英仏海峡トンネルよりも相当困難であったのですが。

 しかし、1970年代から80年代にかけての話なので、当時の英仏技術者の問題は、そのまま21世紀の日本の建設業界の問題になっています。

 問題の根源は、技術に係る思考スタイルと、技術伝承における人材問題を挙げています。前者はお国柄という話ですが、後者は高齢化と人口減少が背景にあり、技術伝承の難しさを述べています。若手技術者の成長には、論理と実践のバランスが重要で、大きなプロジェクトが実践で体験できる環境が必要とも言っています。

 

 かなり、ネタバレを含んでしまいましたが、建設技術者にはぜひ読んでほしい本です。特に地質屋さんには、間違いなくお勧めです。

 筆者を通じて、日本の技術コンサルタントのあるべき姿が、具体的に見える本です。