技術士による技術者のブログ

技術士の支援と国産エンジニアの再興

トレードオフは当たり前のこと

 技術士総合技術監理のテーマとして、トレードオフ(二律背反事象)の解決がよく示されます。

 トレードオフとか二律背反、と言うとかしこまった感じになりますが、簡単に言えば「彼方(あちら)立てれば此方(こちら)が立たぬ」という話です。

 みなさん、仕事をする上で唯一のミッションに向かって、他のことは考えずに思う存分注力する経験など、おありでしょうか?

 中には、発光ダイオードの中村教授のように、永年にわたり孤高の研究を突き進むという職場環境に恵まれる人も、稀にはいらっしゃるかもしれません。しかし、大多数は時間と予算の制限の中(つまりは経済的管理下)、あるいは資源や情報に係る境界条件を与えられ、目標達成への努力を行うものでしょう。民間企業ならば尚更です。

 現代社会では、トレードオフのない事業活動など、滅多にないのです◎

 特に現代は、環境保全を無視した開発などありえない時代になりました。すなわち、経済活動と環境保全活動は、切っても切れない関係にあるのです。国の発展コンセプトである「持続可能な開発や発展」とは、「経済と環境のトレードオフを解消すること」に他なりません。大規模事業には環境アセスメントが法令化されていますし、二酸化炭素排出量や燃費の改善など、日常茶飯事にトレードオフのミッションが出現します。

 ですから、身の回りで起きているトレードオフ事例を探すまでもなく、環境と経済活動のバランスを保つこととは、いくらでもある筈です。

 

 遠回りをしましたが、総合技術管理の試験でトレードオフ事例や上手くいかなかった経験を求められたら、まずは社会環境管理と経済性管理のトレードオフを想定し、自分の技術的ミッションと環境保全のことを用意すればよいのです。

 次いで、社会環境と情報管理の両立や、安全性と経済性の両立、人的資源と経済性の両立など、バランスをとることが普通のミッションを想定してみましょう。

 あらためて探さなくとも、自分の経験の中でたくさん事例が出てくると思います。

 

 しかし、技術士総監のテーマは、それに気付くことが重要であるのだと思います。管理的な立場においては、総合的かつ俯瞰的な立場で、先を見越して問題点に手を打っていくために、ケーススタディを積むことが必要なんだと思います。 

 今一度、皆さんの経験を整理してみてはいかがでしょうか?