技術士による技術者のブログ

技術士の支援と国産エンジニアの再興

リスクアセスメントの時代

 ここ数年は、経済活動におけるリスクアセスメント重視の時代に完全に入っています。

 リスクアセスメント自体は昔から当然ありましたが、今は体系化し、コントロールしなければいけない時代であるという意味合いが強いです。

 最近の経済界における事件・事故も、枚挙に暇がありません。その中でも技術立国日本にとって致命的な問題も多く、タカタのエアバッグ事故、三菱自やスズキの燃費偽装は今も継続していますし、その前にはフォルクスワーゲンの排ガス不正(海外)もありました。

 これらは一技術者によるコントロールミスではありません。企業幹部(経営陣)のミスであり、つまるところ、リスクアセスメントのできない人間が経営者になっているという実態が見えます。 日本の企業においては、トラブルの責任を社長が取って辞任するというケジメのつけ方が必要ではありますが、トラブルを予測し管理できなかった人が次期社長を任命してはいけない筈です。リスクアセスメントには経営陣の人事も含まれると思うのです。

 

 私のいる会社を含め、多分ほとんどの民間企業における経営人事は、リスクアセスメントとは別次元で決定されているでしょう。特に、景気の時流をうまくとらえた営業成績の良い人間が、経営者の椅子に座れるという常識があります。

 それについてはある面当然ですが、リスクアセスメントの能力を身に着けた人であるかという観点が欲しいものです。

 技術士の資格も単なる看板でありますが、総合技術管理部門においては、このあたりの勉強も行わなければいけないので、私の意見としては、管理職となる人間は総監部門の受験をお勧めします。 

技術士という資格を考える(2)

 世には資格を取得し、個人で独立される方もたくさんおりますが、技術士は独立しやすい資格でしょうか?

 私の経験では、「看板は持っているが簡単には開店できない」と言わせていただきます。逆にどうすれば独立できるかを考えてみれば、建築士や測量士などの他の資格も同様と思いますが、『商売として成り立つだけの顧客を持てるか』、という点が実際の問題です。

 組織の中で業務担当している人は、新規営業を行ったり、納品までのお客さんとのお付き合いを大事にしているでしょうか?いわゆる、自分の人脈(もちろん社外)が構築されているかが独立には極めて重要になります。

 技術士として大活躍している技術者でも、独立が難しいのはその点です。

 むしろ小さな組織で仕事の上流から下流まで何でもやっている方が独立しやすいでしょうし、大組織で分業化されればされるほど、仕事の目的や落としどころが分からず、顧客と話ができないということになり、つまりは人脈も築きにくいというケースがあります。

 

 技術士として独立を目指している人は、私の知る限りそんなに多くはいません。しかし、コンサルティングを行うということは、顧客のあらゆる要望・要求を把握しているということが理想です。

 本ブログは、経営コンサルとは別の技術コンサルについてお話しておりますが、顧客の技術的課題を解決することはもちろん、仕事の上では経営的な相談も出てきます。

 その時に、「経営相談は他をあたってくれ」という対応を私は取りません。分からないながらも、相談に乗ってあげたいし、互いの悩みについて話ができる関係を大事にしています。

 また話がそれました。

 技術士は独立できるかという質問は、おそらく多くの技術士にとって愚問なのですが、そこには大事なエッセンスが詰まっているということなのです。

 独立するということは、単に個人で会社を持つということに留まらない。

社会人としての在り方を問うているのです。

 

 

  

 

技術士という資格を考える(1)

 さて、私は、いろいろな分野の技術者が、資格を利用しながら社会で技術上の悩みを解決していくコンサルティングを行うことが一つの社会貢献と考えています。

 実は私、今の業界に入るまで製造メーカーにおりまして、資格など取ろうと考えたことはありませんでした。なぜなら、資格は仕事の役に立たなかったのです。

 ただし、それは「モノ」を相手にしている製造マンの時、特許や製品の性能向上を考えていれば良い20代の頃であり、人を相手にし始めてからは、資格もサービスの上で重要であることに気づきました。 

 

 ●技術士受験者の皆さまは、資格をどのようなものとお考えでしょうか?●

 

 一般的に、技術士は受験難度が高い技術系の資格であり、合格するための受験テクニック的な話が多くなりがちですが、私の実感として、合格者を見回しても『開店休業状態』の方が結構いるように思います。

 つまり、技術士という「看板を掲げること」で満足し、実質お客が入らない時間を過ごしている「店主」が多いということです。資格は単なる看板であり、客が店に入るきっかけにはなっても、店の奥にいる本当の職人だけがリピーターを得られるのです。

 講習会やセミナーで、ひたすらインプットを繰り返すもアウトプットがない技術者は、そもそも資格ですら人生の中ではインプットの一つでしかないことに、気付いて欲しいです。

 

 話が横にそれました。技術士という資格は何のために必要か?という素朴な疑問を投げかけられたら、私は技術のコンサルティングを行うためと答えます。

 技術的なコンサルタントとは何でしょう?誰かが知らない技術の知識を知っていることではありませんし、誰よりも技術的な経験が多いこととも少し違います。

 コンサルティングとは、問題を解決する手段を考えることであり、知識だけでも経験だけでも足りません。おそらく、熱意や忍耐力も必要で、高い人間力が求められる職業だと考えています。 ですから、継続的な研鑽が必要であり、人との接し方も重要なのです。

 では、続きはまた次回に。

 

 

 

今年の総監 問題予測

では、1ケ月後に迫った平成28年の総合技術監理の出題におけるトピックを、予測してみました。

 今年の出題トピックは「人工知能」すなわち「AI」です。

 第3次産業革命とも呼ばれるAIの普及は、本当にバランスある管理の下に置かなければ、とてつもないリスクをはらむものと認識されています。これまでの技術分野の発明としては、クローン技術やドローンなど、倫理問題が問われるものがありました。しかし、人工知能の潜在リスクはこれらの比でなく、人類の存続を危ぶむ声も出ているほどです。

 つまり、技術士総合技術監理部門の試験問題として最適ではないかと、私は思うのです。出題の予想パターンは以下の通りです。

 「あなたの得意とする技術分野において、人工知能を用いた新プロジェクトを管理する場合、どのような技術に人工知能を応用するか記述せよ。また、そのプロジェクトにおいて、発生が想定されるリスクを挙げ、それらの対策法を論述せよ。なお、人工知能に係るリスクは、経済性管理・人的資源管理・安全性管理・情報管理・社会環境管理における潜在的な問題とする」

 といった問題です。いかがでしょう。

 技術部門を超越した、人類共通の課題ですね。一度検討してみては、と思います。

技術士二次試験まで1ヵ月~総監部門について~

 今年の二次筆記試験は、7月17日(日)と18日(月)で、総合技術監理は18日です。本日は、総監に絞って、昨年の出題を振り返りたいと思います。

【平成27年度の問題】

 去年の必須科目は、東京五輪をトピックとしたリスクマネジメント問題でした。

 問題の趣旨は、「東京五輪のような国際的イベントで各技術部門のプロジェクトを設定し、リスクマネジメントについて総合技術監理の視点で問題に答えること」です。

 総監部門は、もともと個別の応用技術ではなく、二律背反といわれる課題に対し、俯瞰的な技術管理を試す問題を解いていくのですが、昔からリスクマネジメントに関する出題は、時代を先取りしたなかなか良い問題が出されています。

 繰り返し出題されるのは、「不測の事態に遭遇したケースにどのように対応するか」、「設定した目標を達成できないリスクを分析し、どのように対応するか」といった問題です。

 昔の経験論文においては、自分が業務で受動的にクリアしてきた技術経験を論じれば良かったかもしれませんが、現在の総監試験は、ケーススタディ的に、自ら場合分けしながら、論理的に課題を解決する応用能力を求めています。

 ★記述のポイント★

 東京五輪のような一大イベントを自分で設定し、プロジェクトを妨害するリスクを自分で設定しどう解決するかを書くわけで、言ってみれば『自問自答』の論文です。制限をよく理解して、自分で課題を考え、自分で解決策を述べるものですから、配分を間違わなければ、時間内に論理的に片づければよいのです。

 ですから、毎年このパターンを理解して、前置きのトピック(昨年の東京五輪)に驚かずに、冷静に書いていくことを心がければよいです。

 このパターンを理解しておけば、あとはトピックと制限条件は何だろうというスタイルで待ち受けることができます。

 

 毎年出題形式を変えながらも、総合技術管理で求めているのは、プロジェクトの中でリスクを把握して、先手を打てる技術者なのです。与えられる課題の難しさは、ある程度前置きで設定してくれるので、難しい技術課題を解決することが求められているのではありません。様々な同時多発的に発生する課題に、バランスよく対応することをアピールすべきなのです。それも、マニアックな課題ではなく、本質的であれば誰も知っている(総合技術監理的な)解決法でよいわけです。

 長くなりましたので、このあたりで今日は終了しますが、エッセンスは理解いただけましたでしょうか?

 

こんばんは。初めてのブログです。

今日よりブログをはじめます。

 30を過ぎて、製造業からコンサル系会社に中途入社しもうすぐ20年になりますので、結構な年齢からブログを始めることになります(笑)。

 まったくの別業界に飛び込んで様々な現場を経験し、どうも国家資格も重要なんだと気付いて技術士を取得、毎日の仕事に生かしながら後輩育成を目標にしています。

  現在の取得部門は、建設、環境、衛生工学、総合技術監理です。

 最近の経済界のゴタゴタは、一流企業といわれる会社で普通に起こり、過去にない道徳的な問題も目立つし、国際的な流れによるものもありますが、将来の日本企業の姿が本当に心配になります。

 一会社員でありながら、私も何かできることはないかと思い、技術士をはじめとする資格取得を応援しながら、世界をけん引する将来の日本の技術者を増やすことができればという気持ちで始めます。皆さまよろしくお願いします。